あなたに会えたあの日から

生まれる前のやくそくが、今、現実になる

家族


こんばんは。nicosaです。



日曜日は父の日でした。



父の日、母の日、家族を想う日。




思い出します。

祖母が話してくれた家族の話。

今日は、わたしの家族のお話です。





祖母が風邪をひいて、
珍しく寝込んでしまいました。



彼と出会う、まだもう少し前のこと。



わたしは、
祖母の家へお見舞いに行きました。



祖母はベッドから起き上がり、
いつもの優しい声で、話し始めました。




nicoちゃんは、だんなさんのことが好き?」



わたしは「はい。」と答えられませんでした。



首を傾げました。



「そう。nicoちゃんはまだ、ほんとうに好きな人に出会っていないのね。」



祖母はなだめるように、
わたしを優しく見つめて、
それから、こう言いました。



「あ、こっち向いて笑った。」



nicoちゃんにはね、二人の守護霊さんがついてなさる。あ、また、ばあちゃんを見て笑った。ふふふふ。」



「立派な守護霊さんが、ふたーりも。」



「ふふふふ。ああ、ウインクした!」



「守護霊さんが、ばあちゃんにウインクしましたよ!」



わたしは目を丸くしてうなずいて、
それから、怖々と、うしろを振り向きました。



「あらあら、見ても見えませんよ。」



nicoちゃんには守護霊さんは見えませんよ。ふふふふふ。」




わたしが驚いた顔でうなずくと、



祖母は、
お嫁に来たとき持ってきた、
自慢の桐ダンスの方に、
ゆっくりと歩いて行きました。



nicoちゃん、ここへいらっしゃい。」



nicoちゃんも大人になったのだから、もう、この話をしてもいいでしょ。」



トントンと畳を優しくたたくと、
祖母はわたしを側に呼びました。



祖母の横に座ると、
祖母は桐ダンスの引き出しを開けて、
そこから何かを取り出しました。



そして、それを、
わたしに見せました。



こけし」でした。



「これ、何だと思う?」



わたしが、「こけし。」と答えると、
祖母はこう続けました。



「これはね、じいちゃんが好きだった人が、じいちゃんにくれたもの。」



祖母の顔は、
笑ってもいないし、
怒ってもいないし、
でも、とても優しい顔をしていました。



「じいちゃんが、好きな人のところへ行ったっきり帰って来なくなって。」



「ばあちゃんはじいちゃんに、帰ってきてほしいと、じいちゃんの好きな人の家まで頼みに行きました。」



「まだ、子どもも小さかったから。」



「でも、それでよかったと思っています。」



「じいちゃんは、家に帰ってきてくれました。」



「そして、ずっといてくれたでしょう?」



nicoちゃんも知っているように。」



「天国に帰るまで、ずっとね。」






それから、
こんなことも言いました。




「家族が、小さな箱の中に暮らすようになって、世の中はおかしくなってしまった。」



「子どもはみんなで育てるもの。」



「お父さんとお母さんだけでなく、近所の人も、知り合いの人も、みんなでね。」



そう言って、
手に持っていた「こけし」を、
そっと優しく、
桐ダンスの中に仕舞いました。




祖母は立ち上がって、

部屋の外に向かって

ゆっくりと歩いていき、

そっと振り返って、

わたしにこう言いました。





nicoちゃんがどんなに悪いことをしても、ばあちゃんだけは、nicoちゃんの味方ですよ。」





祖母は優しい笑顔で、
わたしを見ていました。



そのとき、わたしは、
祖母が何を言っているのか、
何を言いたいのか、
まったく分かりませんでした。



ずっと、
何のことなのか、
わたしには分からないままでした。



あの人と出会って、
いろいろなことに気付き始めるまでは。




祖母は知っていたのでしょうか。




わたしが、
いつの日か、
あの人と出会い、
自分の家族について、
思い悩む日が来ることを。




そして、昨日まで、




「小さな箱」の話は、
核家族化の話だと思っていました。




でも、今日もう一度、
祖母の言ったことを書き起こしてみて、




「小さな箱」は、
「結婚」のことではないかと、
ふと思いました。




でももう、祖母に聞くことは
叶いません。




祖母は、
2013年の1月に、
空の向こうに旅立ちました。




わたしが、
あの人に出会う、
前の冬。




祖母が祖父のもとへと
旅立ったのは、




空が青く澄んだ、

雲ひとつない、

とても寒い冬の朝のことでした。










nicosa